
夜間痛といえば
今回は夜間痛に対する理学療法です。
夜間痛といえば多くの場合には肩関節周囲炎患者が対象となるように感じますが、実際は肩関節拘縮や腱板断裂の患者でも起こりうる症状です。
では、夜間痛とは一体どういったメカニズムで起こるのか?といったところをちょこっと解説します。
夜間痛に共通した点
前述したように夜間痛は肩関節周囲炎だけでなく、肩関節拘縮や腱板断裂の患者にも起こる症状であります。しかし、すべての患者に起こるかというとそういうわけではないわけです。
では一体どういったことが起こったと時に夜間痛というのは起こってくるのでしょうか?
夜間痛には共通点があるのでしょうか?
夜間痛について知っていくうえで重要となるのが「肩峰下圧」
肩峰下圧というのは、そのままの意味で、肩峰の下の組織の圧力。つまり、肩峰下滑液包と腱板などで構成されている肩峰下の圧力です。
実はこの夜間痛は肩峰下圧が上昇することによって起こるといわれています。
ここで疑問になるのが、どうすると肩峰下圧が上昇するのか?ということですね。
肩峰下圧が上昇する因子
肩峰下圧が上昇することによって夜間痛が起こるということはわかりましたが、ここで重要になってくるのは、なぜ肩峰下圧が上昇するのか?そして理学療法士によって圧力の上昇を防ぐことができるのか?ということです。
肩峰下圧が上昇する理由として考えられるものに、浮腫や腫脹、癒着や瘢痕形成というものが考えられます。
浮腫や腫脹というのは、炎症が起こっているときに起こるものです。
炎症の波及や損傷などにより炎症が起こると、その修復過程として浮腫や腫脹が起こりますよね?
復習がてらみてみてね。
炎症期に起こる夜間痛
そうすることで肩峰下腔の容量が増えることになり、結果的に圧力が高くなっていくわけです。このことは肩関節周囲炎でいう「炎症期」に起こる出来事でしょう。
腱板や肩峰下滑液包、腱板疎部などに炎症が起こることによって炎症が広がっていきます。ただでさえ痛みに対して敏感になっている状態なのに圧力が高くなると余計に痛くなってしまいます。
みなさんは指を刃物で切ってしまったことはありますか?
切れてから時間が経つと、切れたところがじんじんしてくると思います。さらに切れている指の付け根を反対の手で握って血管を占めるとよりジンジンしてくると思います。
これは血流が静脈によって中枢へと戻っていくことができず、結果末梢血管の圧力が高くなったことで神経をより圧迫してしまい痛みへとつながったのである。
このような出来事が夜間起こっていると考えられるのです。
拘縮期に起こる夜間痛
炎症期に起こる夜間痛に関して説明しましたが、夜間痛は何も炎症期限定で起こるというものではなく、拘縮期でも肩峰下圧が上昇してしまうことがあるため、それに伴って痛みが起こります。
その拘縮期の夜間痛でキーワードとなるのが、癒着や瘢痕形成です。
人は知らず知らずの間に肩峰下でのストレスと戦っています。
そうなるのも周囲の筋肉の緊張具合や姿勢の崩れなどが原因となってくるのでしょう。
そうした中で、腱板や肩峰下滑液包にストレスが加わり炎症が起こり、肩関節周囲炎の炎症期へと入っていくという考え方ができます。
炎症期はおおよそ3か月で脱することができますが、この時に癒着や瘢痕形成が行われることもしばしばあり、このことが夜間痛の問題となるのです。
この記事を読むと少し理解できるかも。
このことが起こるとそもそも間隙が少なくなってしまうということでもありますし、前上方支持組織の拘縮が起こるということは、骨頭の上方偏移を助長してしまう可能性も高くなりますので、結果的に肩峰下圧につながります。
ですが、この時に一番厄介なのが、伸展や回旋が加わった時なのです。また、拘縮が起こっているだけならば、肩峰下圧の変化は少なくなるため、刺激としても少ないように考えられます。
しかし、寝ているときの姿勢や寝返りの際には、ほぼ確実に伸展や回旋が加わりますので、そのタイミングや動きの積み重ねによって痛みが起こってくると考えられます。
つまり、拘縮期での夜間痛では、肩峰下の組織に物理的なことが起こり、そのことにより硬くなってしまうと、動きや姿勢の変化によってそこが刺激を受け、結果夜間痛へと発展してしまうということです。
このように、同じ夜間痛といっても時期や状態によってまったく異なった原因がある場合が多いです。
しっかしとその患者さんはどういった原因によって夜間痛に繋がっているのかを的確に捉えられるようにしたいですね。