
肩関節のよくある痛み
肩関節疾患の患者さんを診ているとよく見かけるのが、三角筋のところをさすっている姿。
そう、肩関節の痛みは三角筋に感じている人がかなり多いのです。
確かに、三角筋を触ってみると筋緊張が亢進状態となっていることが多い。
ですが、その痛みは本当に三角筋の影響でしょうか!?
考えられる2つの要因!
肩関節疾患の患者さんは三角筋の痛みを訴えることが多く、筋緊張の亢進が診られることから、三角筋に対する治療を行うことも多くなるのかと思いますが、果たしてそれでよくなっているでしょうか?
マッサージやストレッチによって一時的によくなったような感覚にもなりますが、次回来院した時にはまた同じように痛みを感じているのではないかと思います。
そんな時はやはり別の要因を考えるべきかもしれません。
今回紹介するのは2つの考えられる原因についてです。
ぜひ治療の参考にしてください。
関節包由来の影響
肩関節には関節包と言われる袋状に肩甲上腕関節の周囲をぐるりと囲っている組織があります。
実はこの関節包の後方から下方部を支配している神経というのが、「腋窩神経」という神経なんです。
ここで是非ともピンと来て欲しいわけですが、わかりますよね?
そう!三角筋も同じ腋窩神経による支配を受けているのです。
つまり、関節包が周囲との癒着や瘢痕形成によって拘縮を起こした時や、関節内に炎症誘発物質が放出されている状態になった時に、関節包の侵害受容器が反応して、その刺激が腋窩神経を通って脊髄〜脳へと伝わり痛みを自覚するわけですが・・・。
この時に脳が同じ腋窩神経によるものですから、関節包の痛みではなく三角筋による痛みと誤認してしまうわけです。
そのことによって、三角筋に影響がないにもかかわらず痛みが発生するという仕組みなわけです。
神経絞扼性の影響
続いては、神経絞扼による影響です。
この絞扼されるであろう神経というのも、先ほどと同じ「腋窩神経」です。
この神経は、走行の関係上狭い隙間を通ってこなければならず、それが故に隙間が狭くなった場合に神経が圧迫されてしまうのです。
その隙間というのが、QLS (Quadri Lateral Space)
聞いたことありますよね?
QLSは、小円筋・大円筋・上腕三頭筋長頭・上腕骨によって構成される、その名の通り4辺形のスペースです。
ここを通る腋窩神経が圧迫されることで障害に陥るわけです。
いわゆる「神経絞扼性障害」というものです。
神経というのは、圧迫や伸張・阻血に弱く、このことが起こることによって、放散痛や筋力低下・知覚障害が起こります。
今回の腋窩神経の場合にも、QLSでの絞扼によって三角筋に放散痛をもたらしたということが考えられます。
まとめ
三角筋の痛みは、必ずしも三角筋に原因があるとは限らず、思わぬところの影響によって誘発されていることがよくある。
それには、関節包やQLSが密接に関係しており、原因は腋窩神経。
そのため、むやみに三角筋に対する治療を行なっていても改善することはない。
関節包の癒着・瘢痕組織に対する治療やQLSを構成する筋肉の伸張性改善・スパズム改善といった治療が必要となります。
皆さんも三角筋の痛みで悩んだ場合には、是非ともこの影響を考えてみてください。