肩関節複合体
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肩関節の治療は非常に難しいイメージがあることについて、過去記事で患者数の問題や療法士間の領域の問題、そもそもの患者数の問題といったところに焦点をあてて、私なりの考えをまとめました。

ですが、やはり肩関節自体の複雑性により苦手意識がでてしまうことも問題なのは間違いないと思います。
そこで今回は、肩関節の難しいところを考えながら、どうすれば肩関節を理解することができるのか、治療をできるようになるのかというところを焦点にして、私の考えをまとめていきたいと思います。

肩関節の難しいところ

では肩関節の難しいところとは一体どういったところでしょうか?
色々あるでしょうが下記のようなことが当てはまるのではないでしょうか。

肩関節=肩甲上腕関節というイメージ

みなさんは肩関節を想像してと言われた場合、何を想像するでしょうか。
苦手意識を持っている方の多くは肩甲上腕関節を想像するようです。

肩関節の治療について勉強会を行ったり、新人の理学療法士に対して指導するときに質問すると、ほぼ肩甲上腕関節のみを想像しています。
一般的には肩関節といえば肩甲上腕関節を指しますが、理学療法士としては肩甲帯を想像する必要があります。
ではなぜ肩関節=肩甲上腕関節というイメージになっているのでしょうか?

理由の1つとして、肩関節の痛みがどこに起こっているかを想像するからだと思います。
肩に痛みのある患者さんに対して痛みの場所を聞くと、肩甲上腕関節周辺を指したり、さすったりします。

実際肩関節疾患では肩甲上腕関節の問題が多いです。そのため、肩関節=肩甲上腕関節のイメージがつきやすいのではないでしょうか。
また、肩関節について養成校で習った時のイメージも大きく影響します。
肩関節の可動域測定でも、肩関節と肩甲帯とで項目が分かれていて、肩関節の動きは肩甲上腕関節のみで行われているように感じてしまいます。

その他にも養成校では
『回旋筋腱板の機能は骨頭を安定させることです。そのため、回旋筋腱板の機能が低下するとインピンジメントとが起こることがわかるので、そういった場合の治療では、腱板機能訓練を行いましょう。』
『肩関節周囲炎では、3つの病期に分類されますが、炎症期が過ぎたらコッドマン体操や滑車体操、筋スパズムへの直接伸張などを行ないましょう。』
と習います。

間違っているという訳ではないのですが、肩甲上腕関節のみに焦点が当てられ、肩関節=肩甲上腕関節という内容になってしまっています。
肩関節について苦手意識がある方は、例が間違っているようには感じないでしょうが、肩関節の治療を理解している方だと違和感を感じることでしょう。

肩甲骨の機能を考慮できているか

そもそも肩甲骨は肩甲帯というイメージが強く、肩関節ということをわかっていながらも、いざ臨床では肩関節の分類から切り離されているように感じます。
例えば、肩甲上腕リズムがあります。

肩甲上腕関節が120°、肩甲骨が60°動く中で、どのような割合で挙上動作が行われるかというものですね。

ですがこの理論を臨床でどのように活かすでしょうか。いい割合で動けているか計測する訳にもいきません。
経験を積むことでわかるようにはなってきますが、苦手意識のある方には無理があります。

となるとやはり肩関節の屈曲可動域検査を行って、制限がある場合には制限因子となりえる筋肉のマッサージやストレッチを行う流れになる。
どんな患者さんでもだいたいはこの流れで肩甲上腕関節の治療になってしまうことが多くなって、結果的に肩関節=肩甲上腕関節になってしまうのではないでしょうか?

もう1つ例を挙げます。
肩を挙げる途中に肩峰付近に痛みが起こったとします。この場合だいたいインピンジメント症候群が頭によぎると思います。

painful arcや棘上筋や棘下筋テストを行って陽性だったとするとどんなことを思い浮かべますか?
ここで腱板機能訓練が必要だと思った方は苦手意識のある方かもしれません。

なぜなら肩甲帯の問題がでてこないからです。
肩関節の挙上動作には肩甲骨の動きが必要不可欠です。そのため、評価の段階で、より詳細に肩甲骨がこれくらいどの方向に動くことができているのか、肩甲帯の異常な動作が行われていないかを突き詰める必要があります。

さらに、インピンジメント症候群に関しても、肩甲帯が上方回旋できないために大結節が肩峰下をくぐることができるにインピンジメントを起こしている可能性もあります。
また、このことには肩甲骨の固定筋力が不足している可能性もあるので、肩甲帯の固定力を評価する必要がでてきます。

まだ、この点は難しいかと思いますが、実際には肩甲帯の影響が肩甲上腕関節に問題を引き起こしていることも少なくありません。

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肩関節の治療のために必要なこと

以前から紹介しているように、肩関節の治療に必要なことは解剖学と触診の技術を学んでいることは大前提です。
その次のステップとして必要なことには、肩関節の動きを理解することが必要になります。

肩関節はどのような骨運動によって成り立っているのか、どのような筋肉が働くことで動きが可能になっているのか、といったところです。
そして、肩関節は非常に不安定な関節ですが、非常に大きな可動性を有していることでも有名です。
そのため、なぜ不安定なのに動作ができるのか、その安定性を獲得するためにはどのような組織がどのように関わっているのかを知る必要があるのです。

肩関節を下垂位にしている時だって、骨構造だけを考えれば脱臼することが容易に考えられますが、なぜ脱臼せずにその位置を維持することができるいるのか。
その位置を維持するための安定性がなぜ、動作の時には邪魔にならずに動作を行うことができるのであろうか。

こういったなぜという部分を1つずつ解決することで肩関節の治療につながっていきます。
つまり、肩関節の静的な安定性と動的な安定性を知ることが、肩関節を理解するためにはとても重要な知識になるのです。

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肩関節の可動域とは

ここまで肩関節は複合関節なので他の関節にも注目しましょうと解説してきました。
ですが、わかっていたとしても、そのことを考慮して考えることが難しいのが肩関節です。

あっちの関節、こっちの関節と当てもなく注目していると、結局、翻弄されてしまい、結局、何の治療をしているのかわからなくなる、何をすればいいのかわからなくなってしまいます。

そもそも肩関節とはどのような構成になっているかというと、

・肩甲上腕関節
・肩鎖関節
・胸鎖関節
・第2肩関節
・肩甲胸郭関節

という5つの関節によって構成されています。

肩関節複合体

第2肩関節と肩甲胸郭関節は解剖学的に関節構造をとっているわけではありませんが、肩の動きに関して非常に重要な関節です。

これらの関節が協調して動作を行なうため、もしどこかの関節に問題が起こると、他の関節が負担することで、動作を可能にします。
このことは決して良いことではありません。負担が増えた関節で障害が起こる可能性がでてきます。

例えば、肩関節の挙上を考えてみます。
肩関節挙上の最大可動域は180°ですが、これは肩関節複合体が170°で頸部・胸郭が10°という割合で遂行されています。

さらに170°の内訳を見てみると、肩甲上腕関節が110°、肩甲骨の動きが60°となっており、肩甲帯では、肩鎖関節での上方回旋、胸鎖関節の後方回転・後退が連動して起こっています。
これらの肩甲帯の動きの結果、肩甲骨の外転・上方回旋が起こり、関節窩が上方を向くため、肩峰下でインピンジメントが起こらずに、肩甲上腕関節でスムーズに挙上が行えるようになります。

肩甲上腕リズム

筋骨格系のキネシオロジーより引用

各関節が動きを分担することで、肩の挙上が行われます。
ただ、やはり肩関節複合体の中で、最大の可動域を誇る肩甲上腕関節は非常に重要なポイントでしょう。
そこで肩甲上腕関節の問題をまず見つけていくことで、肩関節に翻弄されずに、治療を行えるようにすることができると考えます。

そもそも、肩関節の複合的な動きを考えたときに、肩甲上腕関節の動きが6割ほどを占めている事実があります。
つまり、肩甲骨云々として肩甲上腕関節が動くことが出来れば、100°近い可動域を獲得することができるのです。

また、肩甲骨が全く動かない症例もあまりいないため、制限はあるにしろ挙上の助けをしてくれます。
つまり、肩甲上腕関節の動きを改善することで、130°くらいまでは、挙上させることができるようになるということです。

肩甲上腕関節で130°くらまで挙げられるようにということは、回旋可動域もある程度改善していることを意味します。
肩関節の挙上には回旋動作が伴うことはご存知でしょうか。

例えば、母指を上に向けた状態で最大限の屈曲を行い、そこから内転を行うと、手掌が上を向いた状態になるはずです。
逆運動の運動を行っても、手掌が上面を向いていたのが、母指が上方を向いた状態になります。

このことが、挙上動作には肩甲上腕関節の回旋が必要であることを裏付けてくれています。
そのため、肩関節を考える場合肩甲上腕関節に注目することが、翻弄されることのない治療を行うためのシンプルな方法と考えます。

ではどのようなことを考えて問題を見つけていくかというと

・上腕骨頭の求心位は保たれているか
・肩峰下を通過できる柔軟性があるか
・筋肉の柔軟性は保たれているか
・スパズムのある筋肉がないか
・骨頭が筋肉の干渉を受けずに回旋できているか
・様々な挙上角度で回旋を行えるか
・挙上の際に回旋が伴うか
・骨頭の安定性はどうか

というような点です。
もちろん他にも色々な要素を考える必要があるのですが、この点を正確に評価することができるようになれば、十分に肩甲上腕関節の問題点を見つけることができるのではないかと考えています。

肩甲上腕関節の問題点を改善できて、患者さんの状態が良く改善したということで良いでしょうし、まだ問題があるのであれば、他の4関節に注目していく。
そういった流れで肩関節の治療を考えていけば、複雑で難しかった肩関節の治療もシンプルに考えられるようになります。

最初はそれで良いのではないでしょうか。
1つ1つの関節を丁寧に治療できるようになれば、その経験が積み重なって、患者さんの挙上動作を見ただけで、だいたいの関節で問題が起こっているのかがわかるようになってきます。
まずはコツコツ1つずつやっていくことが大切です。

1つ1つの関節の考え方や、もちろん総合的な捉え方については、今後投稿していく記事でわかりやすく解説していきますので、ぜひ活用していってください。

今回使用した文献

以前も紹介しましたが、機能解剖を学ぶ書籍としては非常に優れています。
関節の構造、筋の配置はもちろんのこと、それらがどのように働くことで関節運動を可能にしているのかを多くのイラストとともにわかりやすく記載されています。

臨床上非常に重要なメカニズムも多数記載されており、評価や治療を理解するために役立つことが多いです。
勉強会やセミナーでも多くの先生方が、引用するなどその信頼性は高いです。

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