
考える理学療法 〜肩関節をどう考える?
今回からは2つ目の肩関節安定化機構を説明していきます。
もし過去の記事を読まれていない方はこちらから!
前回までの記事はこちら。
考える理学療法 〜肩関節をどう考える?②〜
肩関節の3つの安定化機構
組織的な安定性
まず紹介するのが組織的な安定化機構です。これが何かというと関節包や靭帯によって得られる安定化機構です。
関節包や靭帯は主に静的な安定性を担っており、骨頭が関節から引き離されるような動きが生じた時に、その場でとどめておくために活躍します。回旋の動きでも、回転方向とは反対の関節包が緊張して動きを止め、肩関節の安定性を保てるように働き、どんな動きにおいても骨頭が関節窩から離れないようにするための組織です。
しかし、肩関節は可動域が大きくぶん回しができる関節でもありますので、関節包の構造が複雑で、この点が肩関節の理学療法が難しいと言われる部分でもあります。
先ほども言いましたが、肩関節の組織的安定性を担う組織には、関節包と靭帯が存在しています。
関節包とは
関節包とは、関節の周囲を覆っており、外側を線維膜、内側は滑膜による2重構造で成り立っています。
関節包の滑膜には、滑膜細胞やマクロファージ・リンパ球が存在しており、滑膜細胞は関節液を産生し、骨同士の摩擦の軽減や、関節を滑らかに動かすことに役立っています。また滑膜には血管が豊富に含まれているのも特徴的であります。
外側の線維膜は、骨膜の続きです。骨膜は強靭な線維性であることからかなり丈夫であることがわかり、神経に富んだ構造をしています。
肩関節の靭帯
肩関節には関節包という組織の他に、関節上腕靭帯と言われる組織が存在します。とは言っても実際のところは関節包の肥厚した部分であり、外面からは判断できないのですが、手術で関節鏡を展開した場合に、内面からは確認できるようです。
肥厚するということは、肩関節では特にその部位に対してストレスがかかるためと捉えることができ、その部分では制動力を強くしていることが想像できます。
関節上腕靭帯には、上関節上腕靭帯・中関節上腕靭帯・下関節上腕靭帯に分かれていて、それぞれ違った動きに対しての制動を行なっています。
上関節上腕靭帯 (Superior Glenohumeral Ligament : SGHL)
上関節上腕靭帯は肩甲骨の関節窩上縁から上腕二頭筋長頭腱(LHB)の下方を横走する線維束であり、関節包および前方の烏口上腕靱帯との境界は肉眼的には明らかでなく分別することはできない組織です。
中関節上腕靱帯 (Middle Glenohumeral Ligament : MGHL)
肩甲骨の関節窩上縁から斜めに下りてくる線維束。MGHLはSGHL に比較すると前方の組織からの独立性が高く,柔軟性はあるにもかかわらず比較的太い線維束となっている。
下関節上腕靱帯 (Inferior Glenohumeral Ligament : IGHL)
IGHLは前索(AB)と後索(PB)によって構成されています。
IGHL の前索(AB)は肩甲骨の関節窩上縁から MGHL の下方を下行する線維束で、SGHL,MGHL と比較して太く、固いのが特徴です。
IGHL-AB とPBの間には、腋窩囊(axillary pouch)というたるみの部分があり、これらを合わせて下関節上腕靱帯複合体を形成しています。このたるんでいる領域は、外転位にさせることで強く緊張することから、外転制限の役割を果たしていることがわかります。
今回は、組織的な安定性として、関節包と靭帯を紹介しました。これらの組織は臨床の場面で肩関節拘縮の対象として注目することがあるので、しっかりと頭に入れておきましょう。
またこの点の臨床で約立つ知識についても、後々出てきますので合わせて覚えておいてください!
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