癒着4
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今回は理学療法士にとっての癒着がテーマです。

理学療法士にとって癒着といえば、関節拘縮に対する治療を行うときに着目しなければいけない事柄の1つです。
肩関節疾患においては、肩峰下滑液包や腱板疎部の癒着、膝関節では膝蓋上嚢の癒着など、関節において可動域制限の原因となることが多々あります。

しかし、癒着というイメージに対して、腹部の手術の後に、腹膜などが癒着してしまうことなどを連想し、運動器とは直接関わることがないと思っている方も多くいます。

そのため、そもそも癒着とはどのようなものなのか?という疑問にも至らずに、なんとなくの状態で癒着を理解してしまっています。
そこで今回は癒着とはどのようなものなのかを解説したいと思います。

癒着とは?

上記したように癒着は、整形外科領域というよりは外科領域で、手術の後に起こってしまうことというイメージは強いです。
ですが、運動器疾患で特に関節拘縮患者において、この癒着が原因で可動域制限が起こっているケースは少なくありません。
そのため、癒着とは一体どういったものなのかを知っておく必要があります。

そもそも癒着とはどのようなものでしょうか。
癒着についての説明をインターネットで検索してみると、やはり外科的な開腹手術の後に起こること、という解説がほとんどですが、癒着による関節拘縮でも同じような過程で癒着が形成されていきます。

wikipediaより

癒着(ゆちゃく)とは炎症により、本来離れているべき組織同士が臓器・組織面がくっついてしまうこと。不本意な意味で使われる。逆に本意として離れていた組織に別の組織を固定させることを「生着させる」という。

手術によって傷ついた正常な組織同士を縫合すると、その組織はくっついて自然に治癒(創傷治癒)する。しかし、治癒の過程で本来は離れている組織同士がくっつくことがあり、一般にはこれを「術後癒着」と呼ぶ。

このように癒着は、炎症による影響で起こることがわかります。
肩関節の癒着が起こりやすいポイントでは、肩峰下滑液包や腱板疎部がですが、これらはインピンジメントが起こりやすい部位でもあるので、その影響による炎症で癒着に至るのかもしれません。

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癒着が起こると?

では関節に癒着が起こるとどうなるかというと、かなり厄介な可動域制限を引き起こします。

筋肉による可動域制限であれば、最終域感で硬さはあれど弾性を感じることができます。
靭帯や関節包でも、硬い組織ではありますが、やはり硬い弾性抵抗を感じることができます。また、これらによる制限では最終域付近から徐々に制限がかかってきます。

しかし、癒着による可動域制限の場合には、突然カチッと動きが止まってしまい、最終域感で弾性を感じることができません。

癒着による制限の例を、肩峰下滑液包の癒着の場合で紹介します。
肩峰下滑液包は、大結節が烏口肩峰靭帯下を摩擦抵抗なく、円滑に通過できるよう存在しており、同時に摩擦による腱板の損傷を防ぐことを可能にしている。
そのため、肩峰下滑液包に癒着が生じると、大結節が肩峰下から外に出ることも、中に入っていくこともできない状況になる。つまり、肩関節の挙上と内転のどちらにも動かすことができなくなってしまいます。

本来肩峰下滑液包は、大結節が肩峰下を通過する際に、キャタピラ様に回転することで潤滑しています。
しかし、癒着ではこのキャタピラ様の回転運動を阻害してしまうことになるので、動作事態が起こらなくなってしまうのです。

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癒着ができるメカニズム

ではなぜ炎症によって癒着が起こってしまうのでしょうか?
Adhesion Formationをもとに解説していきます。
癒着は7日間で出来ると言われており、この間にどのような組織的変化が起こっているのかを見ていきましょう。

癒着のメカニズム:DAY1

癒着1

癒着は、まず組織に外傷が加わることから始まります。肩関節ではインピンジメントが影響しますが、手術による切開も外傷ですので、いろんな要因で癒着は始まると言えます。
組織に外傷が加わると、損傷した部位からフィブリンによる粘着力のある線維性滲出液が算出されます。

Check
滲出液(しんしゅつえき)とは
炎症などにより血管透過性が亢進すると、組織や細胞から液体が滲み出てきますが、それのことを滲出液と言います。
炎症が起こると、組織の変質によって、充血・うっ血などの循環障害が起こります。すると血液成分が血管外に漏れ出てきますので、組織内や粘膜の表面などに集積してしまいます。

癒着過程:DAY3

癒着2

Macrophages form the foundation fibrinous bands that bridge tissue surface and the adhesions continue to mature.
マクロファージは、組織表面を橋渡しする基礎線維帯を形成し、そして癒着は成熟し続ける。

マクロファージには、貪食の他にも重要な働きがあります。それはグロースファクターを分泌することです。
グロースファクターは、たんぱく質の1種で、細胞に働きかけて傷を治すための線維芽細胞や分裂を促進する物質です。また細胞再生因子と呼ばれる細胞で、細胞再生には必要不可欠なものです。

このグロースファイバーの働きで、線維芽細胞が遊走し分離することで、どんどん線維芽細胞が増えていきます。
線維芽細胞の働きは、コラーゲン線維を作ることですので、これらの働きによって、両方の組織表面に線維帯が形成されていきます。

マクロファージ
マクロファージは、大食細胞とも呼ばれています。大型の単核細胞で、貪食機能をもつため、生体防御機構で重要な役割を担っています。
結合組織や多くの臓器、組織、中枢神経系に見ることができ、細胞間を移動し,感染が起こるとそこに集積し、細菌やコロイド状の粒子を捕食する機能を有しています。

癒着過程:DAY5

癒着3
線維芽細胞により、損傷部位の線維性組織を形成が行われ続けていくとともに、血管新生や線維芽細胞も増殖し、強力な癒着が形成されていきます。

癒着過程:DAY7

癒着4

癒着は、血管や感覚神経線維を含み、密な線維帯へと成熟していきます。しかし、成熟も7日間しか行われず、それ以降は変化が起こらないとされています。

このように7日間の間に、癒着は完成していきます。
つまり、損傷後や術後ではリハビリを早期に開始する必要があり、積極的に癒着予防に努める必要があります。

整形外科クリニックでの実際

癒着は損傷後7日間で完成してしまうので、早期の治療が必要になります。
しかし、組織を損傷してから7日間以内に、整形外科クリニックを受診することはそれほど多いようには感じません。

ただ、このことは関節によって異なります。
腰痛や膝痛では、比較的早い段階でクリニックを受診してくれますが、肩痛ではなかなか受診しないです。

痛くなって我慢していた、放っておいたら痛みが強くなってきた、動かなくなってきた、という段階になって来院される場合が多く、1ヶ月以上痛みを我慢しているケースが非常に多いです。

当院は肩関節疾患の患者さんが多いのですが、そのほとんどは1ヶ月以上我慢していた症例です。
なぜ受診しなかったのかを聞くと、決まって「肩が痛くなったけど、周りの人に五十肩だから放っておけば治る!」と答えます。

このように、損傷からすぐに治療を開始できるケースはいいのですが、痛みを我慢していたり、適切な処置を受けていない場合には、癒着によって治療が難渋してしまうことが多いです。
もちろん全てのケースで、癒着を起こしているわけではありませんが、大なり小なり癒着を起こしている可能性が高いです。

そのため、療法士は癒着の存在を評価によって的確に突き止める方法を知る必要がありますし、もしも癒着が起こっている場合にはどのような治療をする必要があるのかを考える能力が必要になります。

今回は、どのようにして癒着が起こるのかを中心に解説してきました。
今後は、この知識をもとに、どのような癒着があり、その場合の評価法や治療法について触れていきたいと思います。

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